ひとつの山の頂上に到達した後、下山せずに続けて他の山に向かう登山方法を「縦走登山」といいます。
そして登山中級者にとっての試金石というべきテクニックが、今回のテーマである「縦走」です。
山と山とをつなげて歩くのは正に縦走登山の醍醐味です。
こればかりはロープウェイやヘリコプターなどの乗り物では味わえません。人間の特権といってもよいでしょう。稜線からの眺望や長距離歩行の達成感も格別です。
しかし縦走にはアップダウンがつきものです。特に一度下ってまた登る、というプロセスには心身ともにタフネスを要求されるでしょう。
今回はそんなちょっと敷居の高そうな縦走登山を、もう少し身近なものとして捉えていただけるようご紹介します。
縦走に必要なものは安定性とペース配分
縦走に必要なテクニックは実のところ、体力や技術といったいわゆる能力に相当するものではありません。
安定した歩行方法やペース配分、水分や栄養の補給を含む休憩のタイミングなど、あくまで全て日常生活の延長にあるものです。
とはいえ言うは易し、行うは難し。確かに登山未経験者が縦走を実践するとなると簡単ではないでしょう。
しかし、基本となる理論や理屈は極めてシンプルで、その内容は本来誰でもできるレベルのものなのです。
これさえ理解できれば、実は縦走登山も決して怖いものではないことがおわかりいただけるはずです。
一日の行動時間は6時間以下が目安
山歩きから始める初心者レベルの人が歩き続けられるのはおおよそ2~3時間までです。
縦走をプランに加えられる程度の中級者であれば一般的な体力の持ち主であると想定し、歩行時間は3.5時間~4時間程度を目安にすべきです。
実際の行動時間は歩行時間の1.5倍で見積もることを踏まえ、行動時間を6時間以内に収めるためにも歩行時間は4時間程度に抑えましょう。
長時間の行動は体力面だけでなく、集中力など精神面にも影響が出ますし、天候の変化も予想されます。
特に夜間の行動は、滑落や遭難のリスクが高まるため禁物です。やむを得ず6時間をオーバーしてしまう場合でも、岩場などの危険なポイントは絶対に避けるようにしましょう。
状況が思わしくない場合は無理をせず、山頂付近の山小屋で一泊することも考慮しましょう。
地図や展望からペース配分を考えよう
中級者ともなると、自ずとペース配分にも気を配るようになっているはずです。アップダウンの多い縦走登山において、特にものをいうのがペース配分です。
そこで最初の山を攻略したら、山頂での休憩ついでに一度地図を開き、縦走先の経路を予想しましょう。
「最初に100m下って、その先しばらくゆるやかな登りが続き、その後急勾配になるけれどもここまでくれば山頂は目の前だな!」といった概略だけでも把握できればおおよその見通しが立ち、ペース配分も考えやすくなるはずです。
未知のエリアに挑戦する不安材料を少し減らすだけでも、心身にかかる負担は大幅に軽減されます。その意味でも、この作業をするかしないかでは雲泥の差があるといえるでしょう。
ちなみに上級者ともなると山頂に着いてから山座同定を行い、周りの山の名前と眺望を手がかりに気に入った山を探して、その場で次の縦走先を決めるという例も見られます。
予め縦走先までのプランニングをガッチリ固めるのも安心感がありますが、このようにランダム性のスリルを楽しむのも一興かもしれません。
とはいえもちろん初心者にはオススメできませんので、縦走登山にもある程度慣れるまでは十分にプランを練って行動しましょう。
まとめ
過去の記事でもお伝えしてきたように、基本をしっかり押さえれば登山は決して難しいものではありません。それは縦走登山でも全く同じです。
特に縦走の場合は能力や技術ではなく、無理のないプランニングとペース配分に集約されます。
行動時間を想定した4時間以内の歩行プランを練れば、自ずと休憩のタイミングやペース配分も決まってきます。地図を開いてコースも予測すれば完璧でしょう。
以上を踏まえ、中級者、縦走登山と聞いても怖がる必要はありません。