登山・山歩き

低山とは「安全な山」のこと?道迷いと遭難を避けて登山するための全知識を解説

低山とは「標高の低い山」のことです。初心者の方が初めて挑戦する山としておすすめですが、安全に登山を楽しむためには、しっかりと装備や持ち物を整えておかなければいけません。

そこでこちらの記事では、低山について解説した後、必要な装備や持ち物、地域別のおすすめ低山、低山に潜む7つのリスクについてご紹介します。

低山登山を考えている人は、まずはこの記事を参考にして登山計画を練ってください。

低山とはどこまで?一般的な定義も解説

低山とは読んで字の如く、低い山のことです。

高山に対して標高が低い山のことを指しますが、どこまでの高さの山を「低山」というべきなのか、低山登山ではどの季節が快適なのかなど、低山について疑問を抱いている方も少なくありません。

そこで、低山の基本的な知識について解説します。

低山の基礎知識

低山とは何メートルまでの山のこと?

低山とはどこまでの高さの山のことを指すのでしょうか。実は、「何メートルまで」と明確に決まっているわけではありません。

しかし、一般的には「1,000m未満の山」のことを低山と呼ぶことが多いです。

ただし山の分類の仕方によると、低山性の山は500m以下となっており、500~1,000mの山は「低山性」ではなく「中山性」という分類になります。

また、植物の分布を分類する際にも500mまでが低地帯です。

このことから、山の環境から考えれば「500m以下が低山」であり、登山者の感覚から考えると「1,000m以下が低山」と呼ばれる傾向にあります。

低山登山を快適にできる時期は?

低山は標高が低く高山よりも平地の環境に近いため、高山の感覚で登ると快適な山登りが楽しめません。

低山登山を楽しむなら、4月頃と11月下旬から12月初めにかけての時期がベストです。

高山では夏場の登山は涼しく快適ですが、低山では暑さを感じるので、夏に行くなら通気性が良く速乾性のある服装で行きましょう。

低山の魅力と味わえる楽しさとは?

低山の最大の魅力といえば、やはり気軽に出かけられて日帰りできることです。登山のためのスケジュール調整をする苦労がなく、比較的少ない荷物で身軽に登山ができます。

高山に慣れている人は物足りないのではないかと思われるようですが、本格的な登山道がある山も多く、山に登ったという達成感は得られるので、登山をもっと身近に感じたいという場合におすすめです。

そして、標高が低いながらも眺望が良い山が多く、山頂からの景色を楽しみたいときにも適しています。

街を一望できる適度な高さからの眺めを楽しみたいと、低山登山を行う人もいるようです。

低山登山で整えたい装備

低山とは言え、山に登ることには違いありません。登山のための装備を整えてから登るようにしてください。

低山登山を始めたいという方に向けて、揃えておきたい装備について解説します。

低山だからと侮ることなく、必要な装備は整えておきましょう。

必要な装備

登山ウェア

登山ウェアとして、トレッキング用の長袖のシャツと長ズボンは必ず用意しておきたいものです。

真夏に行くのであれば半袖のTシャツでも構いませんが、肌が出ていると虫に刺されやすくなり、紫外線も予防できません。

冬場なら長袖長ズボンに加えて、防寒用の軽量ダウンジャケットなどをザックの中に入れておきましょう。

登山の服装

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登山靴・トレッキングシューズ

低山に適した靴は、通常の登山靴かトレッキングシューズです。

スニーカーやトレランシューズで行こうと考える人もいますが、濡れたところを歩くときに滑りやすいため登山用の靴を用意しましょう。

日帰りの低山登山であれば、登山靴よりも動きやすいトレッキングシューズをおすすめします。

登山の靴どうする?

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登山用のザック

日常的に使用するリュックやバッグではなく、両手が開放される登山用のザックを使った方が良いです。

登山用のザックであれば胸元やウエストにベルトがついていて、安定性があり、肩への負担を軽減させられます。

ただし、荷物の少なさからそれほど大きなザックは必要ありません。容量の目安は30Lくらいです。

登山用のザックどう選ぶ?

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登山用の帽子

登山用のツバのついた帽子も用意しましょう。

登山での帽子の役割は、急な雨や紫外線から体を守ることと、万が一、落下物があったときに頭を守ることです。

ファッション用の帽子だと汗をかいたときに蒸れてしまうため、通気性の良い登山用の帽子を用意してください。

防水性のある手袋

低山とは言っても、地面に手をついて登らなければいけない場所がある可能性もあります。防水性のある手袋も用意しておくと安心です。

手袋には防寒や紫外線カットの役割もあるので、冬場なら防寒性の高いものを、夏場なら紫外線カットの性能がついた通気性の良いものを選びましょう。

低山登山で用意したい持ち物

低山登山用の装備の次は、用意しておきたい持ち物についてご紹介します。

日帰りの予定であっても、何かトラブルがないとは限りません。

必ず持っていきたい基本の持ち物だけでなく、緊急用として持っていきたいものも確認しておいてください。

緊急用

必ず持っていきたい持ち物

必ず持っていきたい持ち物は、登山時の基本の持ち物とも言えるものです。

最低限持っていきたいものを確認していきます。

  • 軽量の折りたたみ傘
  • アウトドア用のナイフ
  • 手ぬぐいやタオルなど
  • ガイドブック
  • コンパス

山の天気は変わりやすいので、折りたたみ傘は必ず持っていきましょう。鈴はクマよけのための持ち物です。

低山でも道に迷うリスクは十分にあるため、ガイドブックとコンパスは必ず持っていくようにしてください。

食事に関する持ち物

エネルギーを消耗する登山では、食事に関する持ち物は欠かせません。山の上で調理をする予定がなくても、最低限の調理用品と食料は携帯することをおすすめします。

  • アウトドア向けの鍋・バーナー・燃料
  • 行動食
  • ライターなどの着火道具
  • スプーンや食器

この中でも必ず持っていきたいものは、行動食と水です。

行動食は素早くエネルギーを補給できるチョコレートや、空腹を満たせるクッキーなどが適しています。

いざというときのための持ち物

緊急事態に陥ったときのための持ち物です。「気軽に日帰り登山を・・・」と考えていたとしても、怪我や病気、急な悪天候など、登山中は何があるか予測できません。

いざというときのために備えることが大切です。

登山ではロープは必需品ですが、細引きであれば靴紐が切れたときの代用にもなり、ツェルトを簡易的に設営するときにも使えて万能です。

薬は普段服用しているものがあれば忘れずに持参し、刺され用の薬や消毒薬、絆創膏、包帯なども用意してください。

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初心者におすすめの低山とは?地域別に人気の低山をご紹介

これから登山を始めたいという人は、まずは低山で経験を積みたいと考えることも多いようです。

そこで、初心者の方におすすめの低山を、関東・関西・東海の3つの地域からご紹介します。

いずれも登山初心者でも十分に楽しめて、標高が低めの山をピックアップしました。

初心者でも楽しめる低山

【関東エリア】東京都・高尾山

東京都の中でも高い人気を誇る高尾山は、標高が599mと低く、登山客も多いため緊急事態に陥った際にも助けてもらいやすい安心感があります。登山ルートの種類も多く、一度登った後でもルートを変えれば別の楽しみ方ができる奥深い低山です。

山頂からの眺望も良く、天気が良ければ富士山を仰げます。片道1時間半くらいで山頂にたどり着けるので、短時間で登山を楽しみたいというときに最適です。

【関西エリア】兵庫県・先山

関西エリアでおすすめする先山は、兵庫県の淡路島にあります。海を渡らなければならないので少し移動が大変ですが、山頂から眺める洲本市の風景は絶景だと言われており人気です。また、山の形が富士山と似ているため、淡路富士とも呼ばれています。標高は448mです。

先山は神話上での「日本で最初に創られた山」であり、日本国を創った伊邪那岐と伊邪那美を祀る先山千光寺という寺院が存在しています。

【東海エリア】静岡県・沼津アルプス

静岡県にある沼津アルプスは、日本で最も低いアルプスです。香貫山・横山・徳倉山・志下山・小鷲頭山・鷲頭山・大平山の7つの低山からなり、最も高い鷲頭山でも標高392mとなっています。すべてが低山ですが、鎖を使う場面もあり、本格的な登山を楽しみたいという方にもおすすめです。

沼津アルプスの魅力は眺望が良いことで、東海エリアならではの駿河湾や富士山をパノラマで見渡すことができます。さらに四季折々の自然を楽しむこともでき、桜や紅葉など、年中美しい景色を堪能できるところもポイントです。

低山とは「安全な山」のこと?潜む7つのリスク

低山とは「気軽に行ける安全な山のこと」だと思っている人もいるようですが、実は低山には低山のリスクがあります。

低山で登山の練習をしたいという初心者の方も、高山に慣れている上級者の人も、低山のリスクを知って油断しないようにすることが大切です。

低山のリスク

情報が集めにくい

先にご紹介した高尾山くらい知名度の高い山なら問題ありませんが、知名度の低い低山だと、情報があまり集まらない可能性があります。

山の状況がわからないというのは、登山をする上での大きな不安要素です。

初心者の方であれば、ガイドブックが出版されていない低山は避けるようにしてください。

登山道がわかりにくく迷いやすい

低山の特徴のひとつが、生活道などと一体化していることが多いということです。

高山よりも身近な存在である低山は、周辺の人が山に入ることも珍しくありません。

足跡があるからとルートを確認せずに進んでしまうと、自分のいる場所がわからなくなってしまうこともあります。

農道や林道として使われている道など、地図で確認できない道が多いことにも注意が必要です。

意外に荒れた登山道が多い

登山者の少ない低山の中には、意外と荒れた登山道が多いこともあります。

登山道が整備されていない可能性も高く、植物で登山道が確認できない、標識が少ないなどの理由から道迷いが発生するケースも少なくありません。

また、荒れた登山道は足元が悪いため、怪我につながりやすいという点もリスクのひとつです。

見通しが悪く迷いやすい

高山に比べて植物が成長しやすい低山は、木々が生い茂っていて見通しが悪いことも多いです。

たくさんの植物に囲まれた登山は魅力的でもありますが、登山道の荒れや情報不足が重なった場合、ルートを外れて迷ってしまう可能性が高まります。

周囲の景色が見えないと、自分の居場所を把握しづらくなるため、コンパスと地図を使ってしっかりと居場所を把握しながら進むことが道迷い防止の基本です。

夏は高温多湿で体力が奪われやすい

標高が低いため、高山よりも気温と湿度が高いのが低山の環境です。

登山中は想像以上に汗をかきますが、高温多湿な低山の環境で大量の汗をかくと、体力の消耗がさらに激しくなります。

とくに夏に低山登山をする際には、熱中症のリスクも考慮しておきましょう。

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危険生物の数が多い

標高が高くなるほど植物や動物は生存しにくくなるので、高山では見られない危険な生物が潜んでいる可能性も高いです。

標高500~600mほどの低山では、スズメバチが巣を作っていることも珍しくありません。

8~10月はスズメバチの活動時期なので、低山登山はこの時期を避けて安全に行いましょう。

安心感が油断につながりやすい

低山登山が危険だとされる最大の理由は、「低山だから」という安心感が油断につながることです。そのため、初心者の方だけでなく、上級者の方でも道迷いを引き起こしてしまうケースがあります。

高山に行くときには準備万端にしていても、低山登山では簡単な装備と荷物で出かけてしまうという方もいるのではないでしょうか。

低山でも登山だということを頭に入れて、しっかりと必要な準備を整え、油断することなく登るようにしてください。

まとめ

日帰りで登山を楽しめる低山は、登山好きの方にとって山を身近に感じさせてくれる存在です。

山頂に登ると眺望が良いことも多く、比較的少ない持ち物で身軽に登れるという魅力があります。

短時間で登れ、日帰りできるということから、気軽な気持ちで挑んでしまうことも多いものです。

しかし、その「気軽さ」が「油断」になったとき、低山の危険性は一気に高まります。

生い茂った木々、登山道のわかりにくさ、情報の少なさなど、道迷いを発生させる要因は高山以上です。

低山の道迷いによる遭難、ルートを外したことによる滑落死亡事故は頻繁に起きています。

「低山だから」と油断することなく、装備や持ち物を万全に整えて出発するようにしましょう。

低山登山家の方のブログや体験談を探して参考にすることもおすすめです。

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